パワハラに該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例

2019年10月21日「第20回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」が開催され、「職場におけるパワハラに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」に関する素案が公表されましたので、その内容をお伝えいたします。

今回公開された資料は素案ではありますが、

パワハラに「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」が具体的に出てきております。

厚生労働省では以前より
職場のパワーハラスメントについて、裁判例等に基づいた次の6類型を典型例として挙げており、
今回の具体例も、6類型に合わせて示されております。

以下、「パワハラの6類型」ごとにその具体例をご紹介します。

 

 

体的な攻撃

暴行、傷害など

 

<該当すると考えられる例>

・ 殴打、足蹴りを行うこと。

・ 怪我をしかねない物を投げつけること。

 

<該当しないと考えられる例> 

・ 誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること。

 

 精神的な攻撃

脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言など

 

 <該当すると考えられる例>

・ 人格を否定するような発言をすること。(例えば、相手の性的指向・ 性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。)

・ 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。

・ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。

・ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等をその相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。

 

<該当しないと考えられる例>

・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動、行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること。

・ その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、強く注意をすること。

 

 間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視すること など

<該当すると考えられる例> 

・ 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、 別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。

・ 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。

 

<該当しないと考えられる例>

・ 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研修等の教育を実施すること。

・ 処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること。

 

  大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害など

 

<該当すると考えられる例>

・ 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。

・ 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。

・ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。

 

<該当しないと考えられる例>

・ 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。

・ 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

 

  小な要求

業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

 

<該当すると考えられる例>

・ 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。

・ 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。

 

<該当しないと考えられる例>

・ 経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること。

・ 労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること。

 

の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

 

<該当すると考えられる例>

・ 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。

・ 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、その労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

 

<該当しないと考えられる例>   

・ 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。

・ 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。

 

なお、個の侵害に該当すると考えられる例の2つ目のような事例が生じることのないよう、こうした機微な個人情報に関してはその取扱いに十分留意をするよう労働者に周知・啓発することが重要である。

 

以上が、今回の素案で示された具体例となります。

 

終わりに

今回の素案では、かなり具体的に事例が出てきております。

パワハラの判断で一番難しいのが、業務上の指導とパワハラの線引きです。

正式に指針にも出てくると思われますが、今回の「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」を確認した上で、

自社の従業員の言動も確認してみてください。

投稿者プロフィール

志田 淳
志田 淳研修講師・社会保険労務士
「企業はヒトが作る」
「人材の定着には組織風土の活性化は欠かせない」
そして
「楽しく仕事をする人材が増えれば、会社の業績は伸び、離職率は低下する」
という考えから、「楽しみながらきちんと学べる」ユニークな社内研修を実施。その内容からリピートが多いのも特徴。
役所、民間企業で多くの研修実績あり。

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